電池ユーザーのためのリチウムイオン電池の基礎知識

なぜ「リチウムイオン電池」が選ばれるのか?

ズバリ!リチウムイオン電池は小型・軽量・長寿命であるためです。

図1 に示す各種電池のエネルギー密度図は、リチウムイオン電池のエネルギー密度が高く、同じエネルギー貯蔵なら、より小さく、より軽くできるため、持ち運びなどの利便性向上につながります。また、図2 に示す電池の寿命比較図では、リチウムイオン電池の寿命が長く、同じ使用年数で交換不要なため、ライフサイクルコストや交換工数の低減につながります。そのほか、リチウムイオン電池を利用した蓄電システムでは、小型・軽量・長寿命のため、重機などの搬入施工コストや建物構造対策コストの低減にもつながります。

鉛電池に比べて、リチウムイオン電池は自己放電がほとんどなく、内部抵抗も低いため、放電効率がよく省エネにつながります。

一般的に鉛電池は1 時間率、5 時間率、10 時間率、20 時間率で容量を表示されます。例えば、5 時間率100Ah 容量の鉛電池は、20A(容量÷ 時間率)の電流を流すと5 時間で放電終止になります。一方でリチウムイオン電池の放電容量は、C レートで表示されます。例えば、0.2C の100Ah 容量のリチウムイオン電池は、20A(容量×C レート)の電流を流すと5 時間で放電終止になります。図4 に示す放電容量差では、鉛電池は時間率で放電可能な容量差がありますが、リチウムイオン電池はそのような容量差がありませんので、定格容量分をフルに活用することができます。そのため、電池導入のコスト削減につながります。

リチウムイオン電池とは?

リチウムイオン電池の構造

リチウムイオン電池のパッケージ形状は主に図5 のように、円筒型、角型、ラミネート型の3種類があります。

装置の用途や容量、寸法等に合わせて使用するセルタイプを選択します。

リチウムイオン電池の原理

図6 のように、リチウムイオン電池は充放電に伴い電子が正極と負極の間を移動します。電流の担い手としての電荷はリチウムイオンを利用しています。負極は主にカーボン、チタン酸が用いられます。正極に使用される酸化リチウムは下記のような種類があります。

リチウムイオンが移動する経路に有機溶媒を使用します、有機溶媒を使うことでリチウムイオン電池は高電圧でも電解液が電気分解を起こさず、イオンの流れをスムーズにします。有機溶媒はガソリンに似ていて、火を付けると燃えます。正極と負極の間を絶縁するためのセパレータとして有機フィルムが挿入され、これらが金属缶やラミネートフィルムに封入されます。

リチウムイオン電池の等価回路

リチウムイオン電池の充放電は、複雑な化学反応が絡みますが、図7 のように基本となる等価回路を用いて、電池の充放電特性を模擬することが可能です。開回路電圧を表すOCV、電解液内の電荷移動抵抗を表すRe、電極表面抵抗を表す分極抵抗Rct、活物質拡散抵抗を表す分極抵抗Rz、これらを複数個の抵抗とコンデンサの並列回路で表現することができます。

レフエレクトロニクスには、電池・電源・蓄電システムをはじめ、パワーエレクトロニクス製品・技術を検討されている企業様向けに、MATLAB/Simulink モデル開発とシミュレーション検証のサービスを提供しています。電力・回路・制御の専門技術に基づいて、MATLAB/Simulink を用いてシステムモデリングとシミュレーションを実施することで、開発早期の段階から開発製品の課題発見と性能検証を可能とし、設計段階での最適化することによって、開発手戻りの低減と品質向上を目指します。ご興味がありましたら、お問い合わせください。

リチウムイオン電池の安全性

破裂、発熱/発火の原因

リチウムイオン電池の不具合原因は主に電池の設計不良、製造工程不良、誤使用です。リチウムイオン電池の安全面での不具合は、図8 のようにFTA 分析により把握されています。破裂は主に過充電による電解液の分解で生じるガスによって引き起こされます、発熱/発火での熱安全性は、充放電時の熱収支で決まります。つまり、熱の発生量が放熱量より大きい場合に電池の温度が上昇し、最終的に熱暴走して発火に至ります。

発熱のメカニズム

発熱とは、系がエネルギー的により安定的な状態へ移行する際に、差分の熱を放出する現象です。放出すると系は安定な状態に落ち着きます。リチウムイオン電池の発熱は、さらに発熱を招いて温度の制御ができなくなり、熱暴走に至ります。図9 のようにリチウムイオン電池の熱暴走イメージを示します。熱暴走のメカニズムは図10 に示します。

安全対策

リチウムイオン電池の破裂、発熱/発火を抑制するため、電池メーカーで様々な安全対策を行っています。セルの材料改良や配合比率、安全機構から、パックの過充電、過放電、過電流、短絡、過熱、バランス制御等を、様々な工夫をしています。表2は安全対策の一例として表しています。

生物としてのリチウムイオン電池

リチウムイオン電池は生き物です、使わなくても劣化します。表3にあるリチウムイオン電池を、温度違いで365日を貯蔵して、実際に測定した自己放電特性です。

リチウムイオン電池の信頼性

リチウムイオン電池の劣化要因

リチウムイオン電池の使いこなし技術

負荷機器の仕様確認

電池ユーザー側は負荷機器の仕様に合わせた電池の仕様選定が必要です。特に負荷機器の動作電圧や動作電流、動作時間を検討します。表6には一例を示します。

 

レフエレクトロニクスには、標準品の電池製品・電源製品を提供すると共に、カスタム開発も対応しており、 お客さまの負荷(装置)仕様に合わせてご提案します。よりスムーズに電池仕様を選定するため、仕様確認 フォーマットを用意していますので、ご検討の際にお問い合わせください。

必要容量の検討

並列放電時の考慮

前述のようにリチウムイオン電池は生物ですので、新品は同じ状態でも時間を経過して、個体差が出てきます。よって、並列時は注意が必要です。図12 の並列放電試験を示しているのは、温度が上がると電池内部インピーダンスを低下して、より多くの電流が放電されます。また、容量が減ると電圧が下がって、放電電流も少なくなります。よって、容量、温度、初期電圧、インピーダンスの変化量に応じて放電の分担比率を変化します。

保護協調

リチウムイオン電池の破裂、発熱/発火を防止するために保護協調の設定が重要です。各パラメータの協調性を検討した上で設定します。主なパラメータとして放電時間、溶断時間、環境温度、発熱温度、各回路・部品のばらつき、電池容量などです。図13 は例として各保護の協調関係が考えられます。

運用時の注意事項

電池の自己放電と機器へ組込み後のリーク電流を考慮して、電池を枯渇しないように、運用仕様を決めましょう。

電池、機器、装置トータルでの運用を考慮して、電池を枯渇しないように、補充電期間、各種保管期限などを決めましょう。

物流の考慮

電池はエネルギーを貯蔵されている重量物ですので、輸送中にはトラブルを発生する可能性があります。追々検討される最適な物流を配慮して、梱包にも絶縁処理や安全性を十分に注意が必要です。

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